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名将気取り

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2005年 01月 27日

分かれ道はいたるところに

 合宿中の日本代表。DFリーダーの宮本を欠いて、その穴には松田直樹が入っている様子。日本人DFの中で最も世界に近い男と言われてきた松田だが、彼ももう27歳。選手として一番脂の乗り切っている時期である。順調に見えた彼のサッカー人生も紆余曲折あり、最近は精神的にもグッと落ち着いたと評価され、プレーのスケール感も確実にUPしているように感じられる。

 ただ、代表チームというものは選手個人の実力うんぬんより縁が重要だったりするため、呼ばれない人はずっと呼ばれなかったり、重要な時期に怪我をしてしまったりで、その機会を外すと縁遠いまま選手生活を終えてしまうなんてことも珍しくはない。その辺りのことを考えると、松田の場合はまだマシなほうなのかも知れない。呼ばれることは呼ばれているから。かの小倉やアントラーズの金古などは、実にタイミングの悪い時期の大怪我で、そのあとの数々のチャンスを不意にした典型のようである。
 当時、トルシエ体制化でもレギュラー候補だった金古が怪我をして、代わりにそのポジションに起用されたのが中田浩二だった。その後の中田浩二の躍進ぶりは、もちろん本人の努力と運の賜物だが、どうも彼の隆盛を見るたびに金古の姿がダブって見える。彼の代わりにその場所にいるのは金古だったかも知れないと・・・。
 
 小倉は、当時在籍していたオランダのクラブから残留を薦められていたにも関わらず、五輪に出場する目的を果たすために五輪代表に選出されたいがために、オランダでの生活を捨てて日本へ帰還した。本人にもそこに残った方が有意義な想像はついただろう。しかしそういう時代風潮だったのか、クラブでの位置取りよりも彼は五輪への出場にプライオリティを置いて日本復帰を決断したのである。その後のことは周知の通り、五輪予選で大怪我を負った彼は本大会へ出場できなかったた。A代表にも縁遠くなり、Jのクラブを転々とし、今は甲府でプレーしている。J2だからダメだとか、そんなことを言いたいのではない。
 ただ、彼の持っていたプレーのオーラや将来を嘱望させるだけのスケール感を思い出した場合、『日本のベルカンプになれそうだったのに・・・』と嘆息してしまうのである。

 前園にしても、絶好調だった頃に一度転落するともう元には戻れないものなのか。彼と入れ替わるように代表入りした中田英寿の運命とはあまりにもかけ離れてしまっている。仲の良かった彼らがA代表で同じピッチに立つことは、とうとうなかった。

 逆に考えれば、そこで転落し流転のサッカー人生を送ることになった彼らは、その逆境を覆すだけのものを持っていなかったとも言えるかも知れない。たとえば、小野伸二です。彼も小倉と同じように、五輪予選の際中に大怪我で離脱したが、しかし彼は戦線復帰後も自力で邁進し、シドニー五輪には出場できなかったとは言え、先のアテネ出場でリベンジを果たした。

 若手で将来を嘱望される選手の多くは、何年も経たないうちに話題も聞かれない存在となる。Jリーグの選手の平均寿命は僅か4年。引退の平均年齢は25歳だ。今の時点で名を上げてはいても、誰しもいつそちら側に足を踏み入れるのかわかったものではない。リーグでの一試合一試合に、調整のための練習試合に、いやただのランニング中に、はたまたプライベートで車を運転している時にも、どこに運命の分かれ道が転がっているか知れたものではない。

 ことに運命とはおぼろげなもの。今日プレーできる喜びを選手たちが感じ、その選手のプレーを今見れることを楽しまねばならない。その先は誰にもわからないのである。後悔のないように楽しみたい。誰しもが前向きに。それが実は一番難しいのかも知れないが。精進。

# by meishow | 2005-01-27 21:24 | フットボール
2005年 01月 26日

解説者概説

 実況 「シュートがゴールポストを直撃~! 解説のOOさん、今のプレーは?」
 解説 「はい。今のはシュートがポストを直撃した、という形になりましたけどもね」

 往々にしてあり得るTVのサッカー中継の一場面。というか、ある日の放送で実際にTVから聴こえてきたシーンである。解説本人がどう自覚しているのか知らないが、、この手の発言は決して解説とは言えない。ボールがポストを叩いたのは視聴者も同じように見ているわけで、アナウンサーが話したあとにそれを復唱して、それで解説だとはとても言えない。解説とは、『物事をわかりやすく説明すること』。

 サッカーの解説者の場合、サッカーを見る目を持った玄人を連れてくる必要がある。そのため、元サッカー選手がその役を担うことになっているようだ。それも代表経験者でなければいけないらしい。(出演するには代表経験者という明確な基準でもあるのか?)
 それはそれでいいが、その元選手の中でも『口の立つ』人、つまりオシャベリな人が重宝されるきらいがある。場を楽しく盛り上げ、かつ前向きに話すことのできる人物。特に引退したばかりの若手解説者に多い傾向だ。ただ、ここで問題となるのは彼らは全般的に、実況の太鼓持ち役が解説と取り違えているのではないかと思わせることだ。本来の解説をしてくれないのである。出来ないからしないのか、出来るけどしないのかは、わからない。

 サッカーを見る目を持っている人であるならば、視聴者(多くの場合は、解説者よりも知識見識のない人たち)へ向けて、よりサッカーへの理解が深まる見方を提示するのが解説者の務めであると思う。逆に言えば、それだけでいいのだ。それ以外はオシャベリのプロである実況者に任せておけばいい。(これは解説時にダジャレ癖のある某監督の批判ではない。あの手のダジャレくらいは個人の特長としてあってもいいと思います)

 雑誌で読んだ内容をリピートしたり(サッカーファンならみんな知っている情報の繰り返し)、実況者の言葉を後追いして話すだけの腹話術のような台詞回し、マイクの代わりにスタンドで太鼓でも叩いた方が良いのではなかろうか?と疑ってしまう応援団長ぶり・・・。まさに水準の低すぎる解説者のオンパレードである。副音声に切り替えようにも、そっちでも更に水準の低いオシャベリが展開されていたりする。あまりにひどい時には、解説を聴きたくがないためにTVの音声を切ってしまうこともたびたびあるくらいだ。
 とにかく、その解説者の解説を聴くことで、サッカーを見る視点が変わるとか、解釈の可能性を広められるとか、たまには目からウロコが落ちるとか、毎回そこまでは期待していないので、せめて聴き苦しくない程度の水準を保って欲しいのである。視聴者は解説者を選べないのだから。


 なぜ、こんな事態になってしまっているのか? 原因は案外簡単に見つかりそうだ。
 たとえるとすれば、実況者であるアナウンサーが良い例だろう。大卒で放送局に入社したアナウンサーが、その仕事始めにいきなりサッカーの1部リーグの全国放送を担当するだろうか? あり得ないでしょう。まず下部のサッカーの実況をしたりして経験を積み、自身の水準が上がったのち、晴れの舞台として1部リーグの放送の資格を得られるわけで。そこには、実況者としての水準の基準は明確ではなくても確かに存在しているわけである。

 一方の解説者はどうか。候補として上がる元Jリーガーは、指導者になるか解説者になるかの二者択一のような道程になる。しかし、これは本来まったく別の資質が必要とされるもののはずなのである。稀に両方の資質を備えている人材があったとしても、そう多くの人数には上らないはずだ。
 しかしながら、実況1年目のアナウンサーのように、解説1年目のルーキー解説者が、下部の試合の中継を受け持って一から勉強を始めた、というような話は耳にしたことがない。有名であれば全国放送の解説者の席に座る権利を持つのか、はなはだ疑問だ。とにかく、いくらサッカーの経験が豊富だからと言っても、『放送の中でサッカーのプレーについて、わかりやすく説く』仕事、つまり解説者としてはルーキーであることに変わりがないのだ。
 
 そもそも、何もその解説者の資格は元サッカー選手にあるとは限らないのである。サッカーを見る目を持ち、かつそれを噛み砕いて言葉で表現できる人物であれば、その人に資格を与えるべきなのだと思う。
 
 ただ、現在のすべての解説者が失格だと言いたいわけではありません。的確な時に、的確な言葉で実況者ではわからないプレーの中身の部分を指摘し、自分の説明で補完できる人もいるし(好き嫌いは別として)。とりあえずは、聴いていて耳障りでない程度でいいのです。意味のない繰り返し文や、サッカー誌を朗読しているかのような(サッカーファンなら当然知っている)情報の羅列や、実況者のお株を奪うほどの絶叫さえなければ、もうそれでとりあえずはいいのだ。
 日本の放送スタイルが変わらない限りは、たとえば有料放送主体の世界に一変しない限りは、状況は変わらないのでしょうか。『スポンサーの目=視聴率=ベッカムしか知らない層へのアピール度』で判断される限り、本当の解説者もおそらく育たないように思われる。

 エレガントで落ち着いた実況と、冷静で的確な解説者のコンビで織り成される心地の良い放送時間は、果たしていつ訪れることやら。せめて、すべての放送の副音声が『スタジアムの音』に設定されているのならまだ我慢できるのだが、とにかく無音でサッカー放送を見続けるのは結構寂しいものなのである。 

# by meishow | 2005-01-26 17:55 | フットボール
2005年 01月 25日

画餅の憂鬱

 最強の布陣にまたひとつヒビが入った。マジョルカ戦で負傷退場したサムエルは鼻骨骨折だった様子である(参照)。
 TVゲームのような選手の集め方で史上最強の名にアグラをかくレアル・マドリッドだが、その前輪駆動の奇形体質は変わらず。DF陣の力量不足を揶揄され続けて、今季はようやくウッドゲイトとサムエルという2枚の目玉カードを揃えたはずだった。しかし蓋を開けてみれば、二人がそろってピッチに立つ機会は一度としてなく、パボン&メヒアの危なっかしい守備に任せきりという昨年と変わらない様相を呈している。
 怪我で長期離脱のウッドゲイト復帰が待たれる中、始まった後半戦で早くもサムエルにも黄信号。長く響く故障ではないかも知れないが、守備に不安を抱えるチームにとっては安穏していられる事態でもない。これでエルゲラに何かあれば、どうにもならなくなるでしょう。そもそも、ディフェンダーを1人や2人欠いたからといってアタフタするような予算のチームでもないはずなのだが。

 一方、右サイド専門家のベッカムと、飛び出しに才ありの有能MFグティで構成していたセンターハーフには、ようやく助っ人が登場した。強面の削り屋にして意外な器用さも併せ持つグラベセンである。もちろん将来性を買っての投資ではなく即戦力。プレミア中位のエバートンの主力は、史上最強のチームでも堂々のスタメンを張れるという皮肉的な戦力補強である。とはいえ、かなり効果的な補強となるだろう。
 彼が入ったことで守備的ハーフをグラベセンの1枚で補完でき、より攻撃を重視した選手配置が可能となりそうだ。先の対マジョルカ戦ではグラベセンを中盤の底に置き、ベッカムを右サイド、ジダンを左に開かせて、中央はフィーゴとラウル、トップにロナウドを置いていました。試合の決まった後半はさらに攻撃陣の人数が増えたが、マジョルカが一人退場者を出したため参考になるような展開ではなかった。

 昨季より、ラウルの負担はかなり軽くなってはいる。しかし、まだまだゴール前での仕事には集中できそうにない。何せ彼しか前線でプレスを掛けられる人材がいないのだから、守備に関しては彼一人が孤軍奮闘の観あり。泰然自若の満腹坊やロナウドは言うに及ばず、ジダンは半径数メートル以上の範囲にはボールを追わず、フィーゴは基本的に後ろへは戻りたがらない。ベッカムはマラソン選手さながらよく走るが、彼のDFは『一発飛び込み→かわされて終わり』の典型なので、少しテクニカルな選手を前にするとザルもいいところである。

 何とか、あと1人くらいは中盤か前線で意欲的なプレス精神のある選手を入れたいところだが、そうなると、ただでさえ人員過剰気味のスター選手たちの誰かがまた1人ベンチに座ることになる。そちらの方がよほど悩みの種なのでだろう。昨夏、カマーチョが監督に就いた時は、これでどうにかまとまりが出るのかと期待したものだが、その監督の方が選手より先にサジを投げてしまって以降は見る影もない。
 現職のルシェンブルゴは、主力のブラジル人選手から信頼を得ている様子だが、果たして彼らとてベンチを義務付けられれば黙っているだろうか。『何となく親近感がある監督』程度のものなのでは、という疑念は晴れない。たとえば、あのロナウドに効果的なオフ・ザ・ボールの動きを実行させることのできる監督が存在するのであれば、ぜひ見てみたいものだ。

 ファーガソンが、以前ベッカムのセンターでの起用について「まだ早い。もう少し成長すれば任せることも考えている」というようなことを話していたが、それは端的に言えば、判断スピードが上がればということだった。『ボールを受ける・見る・蹴る』の三拍子が揃わなければ、ベッカムは正確なあのキックを繰り出せないのである。センターのポジションでそれだけの時間的余裕が与えられることは実に稀だ。ということは、器用な方ではないベッカムがセンターでできることと言えば、ごく限られてくる。その彼をセンターハーフで使うメリットは何だろうか。さしあたっては、スタミナだけというところか。
 そのセンター起用は、グラベセンがマドリッドに到着するまでベッカムのファーストチョイスだった。彼の変わりに入ったグラベセンは好選手ではあるが、ヴィエラのようなスーパーな人材ではない。やはりフロントは依然として、守備を担当する黒子役のプレーヤーには大金を払うつもりはないようだ。

 スター選手をかき集め出した当初、短い期間で契約していき、血流よく古い選手を切り、また新たな選手を獲得していくのかと予想されたレアル・マドリッドなのだが、辞めていくのは中堅の選手たちばかりでフィーゴやジダンは居残り組となった。
 また来季もスター選手の獲得を目論んでいるだろうことは疑いないが、そのうちにチョコレートの食べ過ぎで鼻血を出すようなことになりそうで仕方がない。予防のために、今から鼻に詰めておくティッシュがグラベセンなのか。どちらにしても、バルサのファンとすればレアル・マドリッドの凋落は酒の肴みたいなものなのだが。

# by meishow | 2005-01-25 19:10 | フットボール