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名将気取り

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2005年 02月 28日

Jリーグ 4バック勢力図

 今週末に開幕を控えたJリーグだが、待望の1シーズンに切り替わる今季も3バックの隆盛は続きそうだ。日本代表でジーコが持論の4バックを断念せざるをえなかった根本的な原因が、3バックを採用するJクラブの多さに起因することは周知の通りである。4バックを採用しているチームの数が3バックのそれを凌駕することがないのが、今のJリーグ。その逆は、まだ考えられない現状だ。
 
 世界的な主流が4バックとなって久しいが、こと日本国内に関してはそれもどこ吹く風。そもそも現在の最先端フットボールの主流派が4バックを採用しているのは、『相手チームの果敢なサイド攻撃を封じるには3人のDFではあまりに不利だから』という明確な理由があった。今やサイドからの攻撃は最も有効であると言われているが、それを忠実に実行し実利を上げている欧州のリーグでは、守備の根幹システムも4バックへ移行していくのは自然な流れであると言える。
 翻ってJリーグを見るに、4バックを指向するチームの少なさが、つまりはサイド攻撃を実効化しきれていないリーグの輪郭を浮かび上がらせている。もちろん、DFを4枚にしたからといって、即座にサイドの守備力が上がるといった単純なものではないにせよ、この3バックの盛況ぶりには違和感を感じざるをえない。

 しかしながら、この2005シーズンは明るい兆しも垣間見える。これまでの開幕前と比べて、4バックを試行しているチームが多く見受けられるのである。今季4バックシステムをベースに臨むと見られるチームを挙げてみよう。
 まずは伝統的に4-2-2-2を標榜する鹿島。Jの中ではもはや4バックの老舗と言っても良い。今シーズンも手堅い4バックでの戦いぶりを見せてくれるだろう。老舗と言えば、90年代後半から4バックを採用し続けている大宮もこれに当たる。さらには、Jで最も欧州の流行に近いスタイルで戦うFC東京がこれに続く。本場欧州に比して毎度半シーズン遅れの導入とは言え、3バックスタイルの中に埋没するJにあっては際立った早さだ。断じて流行遅れとは言えない。
 一方、今ひとつチームとしてスタイルが定着しないも、昨季同様の4バックの採用が堅い。左サイドに平山が復帰し、中盤の人員が充実傾向にある今季こそは攻撃的な4バックの定着が期待できそうだ。

 新たに4バックシステムを根付かせようともがく監督たちにも、謹んでエールを送りたい。反町監督の理想は4バックながら、所属人員の関係でどうにも4バックが定着しきれなかった新潟も、今季はそれを実行可能な人材が揃った。また、長谷川健太・新監督のもと、サイド攻撃重視の4バックスタイル貫徹を謳った清水は、その心意気がどこまで続くか長いシーズンで問われることになりそうだ。若手監督の4バック標榜は、純粋な情熱の顕われとして大いに歓迎したい傾向である。
 
 昨シーズンは何とか残留したという印象が強い広島も、昨季までの3バックを捨てて4バックで臨むと見られる。この他、4バックを試行中あるいはシーズン中に4バックを採用する可能性の残るチームとしては、名古屋G大阪神戸などが挙がる。

 今シーズン、4バックが確実視されているチームは18チーム中7チームに過ぎないが、現時点で4バック採用の可能性のあるチームがすべて導入に成功したとすれば、実に9チームという数になる。J1のちょうど半数のチームが4バックで戦うことになれば、シーズン中に活性化されたサイド攻撃を目にする機会も自然と増加してくることだろう。

 ただし、3バックスタイルの中でも特異なのが川崎大分3-4-3である。Jの中では今ひとつ力が劣ると見られるこの2チームが、共にサイド攻撃重視の3トップ・3バックのシステムを採用していることは新鮮な驚きだ。試合中の多くの時間で5バック化してしまう怖れは多分にあるものの、その攻撃的な姿勢はもう少し称賛されても良いように思う。

 逆に昨シーズンまでの戦いの中で、ある程度の形が定着したチームでは新たな試みも見られる。欧州の香り漂う4-4-2が浸透しきったFC東京は目下、今野の1ボランチからなる4-3-3を試行中だ。ルーカスを中心に、右に石川、左に戸田を配したそれは実質左1ウイング型の変則4-4-2ながら、このサイド攻撃指向のスタイルはクライフの提唱する現代対応型ウイングシステムの理想形に近い趣がある。スペイン派を自称する原監督のこと、よもや偶然とは言えまい。また新たな風を感じることができそうな気配だ。

 昨季期待以上の成績を収めながら、戦力流失を抑えきれなかったオフのツケを払わされる格好になっている千葉だが、オシム・サッカーの浸透しきっているチームがこの難関をどう凌ぐかは見ものである。昨季同様の3-5-2も、3バックの中央の選手を中盤へ上げる変則的な4バックがオプションとして現れそうだ。

 無論、基本として3バックシステムを採用しているチームであっても、試合中に4バックの形を取ることは珍しくないし、またその逆もある。試合経過によって臨機応変な対応を取らねばならないので、それも当然だが、当初から4バックを指向しているチームとそうでないチームとでは、やはりチームとしての狙いそのものが変わってくるということは断言できる。
 実効的なサイド攻撃をいかに実践できるかは、どのチームにとっても大きな課題だが、4バックと心中覚悟のチームが幾つあるかで、Jリーグの盛り上がりも違った様相を呈するだろうことは間違いない。

 まずは指向、そして実践。4バック指向のチームがそれをどこまで押し通すことができるか。成績悪化などの現実的な問題で監督自らが理想を断念することもあるだろう。また長いシーズン中、監督の途中解任ということも大いに考えられる。果たしてシーズン終了後、結果的に何チームが4バックでの戦い方を貫徹できているのだろうか。

 希望としては、4バック思想のゴリ押しによるチーム数の増加ではなく、『サイド攻撃活性化の副作用としてのやむをえざる4バック導入』という過程を望みたい。
 3バック主体のチームでは、往々にしてウイングバックを下げての5バック状態に成り下がることが多いのである。DFラインに5人を配するより、4人で守りきる方が自軍の攻撃を考えた場合に有利なのは言うまでもないだろう。最終ラインは4人で抑えて、有効的なサイド攻撃による敵陣突破。機動力のある日本人の特性を活かした日本型4バックの完成を求めてやまない。

 負けても見所のあるフットボールを提示できるクラブは、すなわち魅力的なクラブである。3人のFWを配した3トップを採用するチームは、今季も3バックの多いリーグの中で面白い存在となるだろうと予想されている。言い換えれば、サイド攻撃を重視するチームと対戦した場合、3バックでは苦戦必至ということ。サイド攻撃を突き詰めれば、おのずと4バックのチームが増えるという構図である。攻撃から守備への好循環のサイクル。そう巧くはいかないとしても、せめて、この逆のサイクルで回らないことを望む。
 
 1シーズン制の長丁場。開幕から楽しめることは幾らでもある。悪成績から発生する圧力の最も少ないシーズン序盤、各クラブの理想像を透かし見ることをお薦めしたい。開幕時から後ろ向きな選択をし続けて、好成績の生まれるはずがないのである。各クラブ、理想とする戦い方の片鱗を見せようと努力してくれるはずだ。現時点で彼らが指向するその戦術を、まずはお手並拝見である。

by meishow | 2005-02-28 22:07 | フットボール


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