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名将気取り

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2005年 02月 22日

フットボール選手の社会貢献

 フットボールにまつわる事項で、海外と日本国内との差異を感じることは少なくないが、プロフットボール選手の社会貢献への意識の差ほど顕著に表れているものはあるまい。海外では、たとえば外面的には利口そうには見えない若手選手でも、ピッチ外では意外に社会的な運動に参加しているケースはままある。自らも怪我や病気に掛かった選手たちは、その体験を経てその種の撲滅運動に協力したり、NGO団体に加入していたりする。先頃、イングランドのクラブ所属選手がガンからの復帰を果たして以後、積極的にガン撲滅運動の啓発に力を入れているのは記憶に新しい。

 翻って日本国内はどうか。Jリーグでも選手協会が主体となって地域への社会貢献活動を行うイベントを企画開催していたりする。チームからの要請で、選手たちが募金活動やフリーマーケット、サッカースクールへの参加などに参加して地域との触れ合いを目指しているという方向性は感じる。だがそれも、個人単位での活動としてはあまり聞こえてこない。
 しかしスポーツ選手の社会貢献となれば、何も現役選手に限った話ではない。むしろ、引退した元選手の方がその面での活動により寄与できるというものである。そんな中、元・日本代表の井原正巳氏が骨髄バンクにドナー登録というニュースがあった(参照)。


 井原氏の登録は、バンク設立に奔走した滋賀県の女性陶芸家をモデルにした公開中の映画「火火」に特別出演したことがきっかけ。井原氏は昨年行った引退試合の収益金からバンクに100万円の寄付をしている。ドナー登録年齢は3月1日に現行の20歳から18歳に引き下げられる。提供可能年齢は20歳以上のままだが、必要な手続きをあらかじめ進めることで、ドナー探しの時間が短縮できたり、登録者の拡大が見込めるようになるという。

 有名選手がこういったPR活動に寄与することで、他の人が同じことをするよりも大きな効果を見込める。そこには特定のチームにも利益になるようなことは何もない。これまで、Jリーグで行なわれてきた『社会貢献』と見なされるものは、一般的に集客率アップを見込んでの計算が見て取れる活動が多かった。特に実際にその活動に従事する選手たちにその意図は明確にないとしても、結果として経済的効果を期待しているのでは、と疑われても仕方のない活動の方法がメインだったことは確かだ。

 しかし、社会貢献に関する活動の仕方は画一的ではなく、海外のクラブの社会貢献的活動内容はより多岐に渡っている。障害者のための基金、病院や孤児院への訪問。人種差別や薬物使用の撲滅運動。それらを選手会の方で企画立案し活動しているのである。無論、有名無名を問わず、選手が個人的に企画して活動していたりもするし、選手自らがNGOまたはボランティア団体のメンバーとして参加している例も少なくない。

 前述の井原氏の他には北澤豪氏の活動が有名だ。彼は2001年1月にカンボジアを訪問し、地雷の被害に遭った子供たちの慰問を行なった。それは国連支援交流財団から依頼を受け親善大使として参加した活動だったが、他にもボランティア活動団体を創設して自らもボランティア活動を続けている。

 こういった例は幾つか見られるものの、まだまだ稀少といった観は否めない。元選手の総数から考えても、少なすぎるというのが現状だ。これについてJリーグ側はどういった捉え方をしているだろうか。元選手については、個人の自主的な発念に任せているといったところか。


選手の社会貢献活動
 2003年度から義務化された選手の社会貢献活動は、選手はもちろん、コーチやクラブスタッフなども参加しています。Jリーグ公式試合の年間シートの寄贈、学校の授業や部活動でのサッカー指導、地域の子供や大人を対象としたサッカー教室のほか、学校への訪問授業、福祉施設や病院などへの慰問、地域行事や観光美化キャンペーンの参加など、サッカー以外の活動にも意欲的に取り組んでいます。この活動によって、以前よりも社会貢献に対する選手の意識も高まっており、2003年度は800件以上の活動実績を上げました。
 また、選手が地域と密接にかかわることによって、クラブが行っている地域スポーツ振興をサポートすることにもなり、クラブと地域のよりよい関係づくりに寄与するものと期待しています。

 これはクラブ単位の社会貢献への姿勢を問うものだが(参照)、各クラブの自主性に任せている限りは財政面での効果を期待するような活動の内容に落ち着いてしまう現状は変わらないだろう。選手の個人単位の活動にしても同様だ。選手が自主的に行なう活動の一般的なケースとして、特定のチケットを選手が自腹で購入しその座席に誰かを、たとえばどこかの施設の子供たちを招待するといったようなものがある。これもいわゆる無私の活動ではあるかも知れないが、やはり直接的すぎる。もう一歩進めるならば、この活動を行なった上で、サッカーとは何の関係もない方面への活動にも参加する姿勢を見せることが必要だろう。

 スポーツ選手が自分の競技を、さらに言えばスポーツすらからも離れた位置で社会貢献をすることが出来るならば、それは選手が個人単位で行なう真の意味での社会貢献と言えるだろう。有名選手にはそのさらに大きな影響力の有無を理解して、より積極的な活動を期待してやまない。

 個人単位での活動が活性化してくれば、それに比例してクラブ単位での活動内容にも、徐々に財政的効果を期待しない方向性になるという意味では影響していくだろう。それは最終的にJリーグの理念に基づく形に近いものになるはずだし、何よりフットボールの日本においての土着具合にも好意的な影響を及ぼすことになるはずである。

by meishow | 2005-02-22 11:58 | フットボール


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