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名将気取り

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2005年 02月 03日

誤審と八百長疑惑

 出てはいけないものが遂に明るみに出たというところか。ブンデスリーガで八百長疑惑が沸騰している。いまだ真相は明らかにされていないが、すでに逮捕者まで出た。今後いかに検察が執拗な捜査を進めても、黒幕までをしょっ引くようなことは不可能だろう。裏にはサッカー賭博組織を養うマフィアの影があるという噂だ。真相は常に闇の中で終わることになるのは間違いない。
 常人には理解しがたいことだが、フットボールを金儲けの手段としか捉えていないフットボール人は無数に存在している。ファンがすべて健康的な資質を備えているわけではないが、特に意思で操作する賭博ほど馬鹿らしいものはない。無論、サッカー賭博は承認されていても、その試合結果を裏工作で操作されてしまえば、真っ当に賭け事に徹している多くの人が馬鹿を見るのである。今回の事件の経緯は以下のようなものだ(参照)。


 疑惑の発端は昨年8月のドイツ杯1回戦。日本代表FW高原が所属するブンデスリーガ・ハンブルガーSVがアマクラブのパダーボルンに、ホイツァー元審判員の不可解な判定などで『2-4』の敗戦。その後パダーボルンの勝利に10万ユーロ(約1360万円)の掛け金が賭けられていたことが発覚し、不正疑惑が噴出。今月21日に同氏が審判員を辞任し、さらに27日には弁護士を通じて不正の事実を告白した。
 ドイツサッカー協会のツヴァンツィガー会長は28日、選手の関与について「その可能性は排除できなくなった」と語り、DFBのハックマン副会長は今後調査対象を広げ徹底追及の姿勢を打ち出した。

 次期W杯を控えたドイツサッカー協会にとっては痛恨の不祥事である。疑惑はさらに広がり、過去の試合の不可解な判定にまで嫌疑が及んでいる。審判のみならず、試合に関わった下部組織の選手にも疑いがかかっていることが一層気分を暗くさせる。
 一つあれば、二つ三つとボロが出てもおかしくはない。むしろ、一度きりだったと思う方が不自然だ。複数人が複数回に渡って関わっていただろうというのは、想像に難くない。

 フットボールはこと得点に関して、スタンドにボールを打ち込めばホームランと一目瞭然の野球よりも数段複雑な造りになっていることは確かだ。ゴールネットを鮮やかに揺らしても、やれオフサイドであるとか、味方選手のファールがあったとか、得点が無効になる要素が幾らでも存在する。つまり審判員のサジ加減ひとつで右にも左にも転ぶ危険性は常に秘めているスポーツなのである。
 それを承知した上で、審判員の判定はすべて良心と誠実さをもって下されると仮定し、その審判そのものの存在をピッチの中に限り、崇めつつ神聖化し、絶対不可侵の判定とする意思統一のもとに戦っているのが選手たちである。今回の珍事は、どこまでもその信頼を裏切る結果となった。

 先のW杯で、韓国戦に対して敗戦国から種々の抗議が届いたが、あれほど世界中が注目した国際大会でさえ、喉もと過ぎれば何となら・・・なのだ。敗戦の原因になった限りなく誤審に近い判定に対して、抗議の声はもはや聞こえてこなくなった。
 W杯は注目度はピカイチとはいえ、所詮は国の名誉をかけて戦う種の大会である。給料がかかっているクラブレベルの試合の方が、勝敗による損得は大きいと考えるのが普通だろう。監督は首をかけて、選手は今日明日の給料をかけて戦っているし、クラブ関係者も勝敗によって分かれる財政的な要素に注目している。各国のリーグ内の試合となれば、注目度はW杯に比ぶべくもない。週末の新聞は、翌週末までの話題のタネに過ぎないからだ。日の経った新聞は捨てられ、誤審も不可解な敗戦もすべて過去に押し流されて、人々は次の試合に注目する。八百長を企む組織が関与しやすいのは、世界的に大きな大会よりもこちらの方だろう。今後さらに捜査が進めば、あまりの問題の根深さに唖然とするような結果になるかも知れない。

 この手の不正でとばっちりを食うのは、いつも真面目に働いている人々である。真剣にプレーしている選手や審判や関係者にとっては、腹の煮えたぎる思いだろう。今後リーガ内のすべての試合に厳しい目が注がれるのは間違いない。好審判員の稀にみる誤審ですら、賭博関与の嫌疑をかけられることになりかねない。
 元来、誤審判定を巡ってビデオ判定導入などの議論が立ち上っている時期だっただけに、今回の八百長疑惑はフットボール界全体にとって神経質な話題になった。誤審によって敗戦を強いられたクラブが賠償金を申し立ててもどうにもしようがない。それを認め始めると、敗戦のたびに裁判沙汰にするクラブが相次いで出るだろう。捜査そのものが莫大な時間を要するし、すべての誤審判定とそれに関わった審判員や関係者を調べ上げることは、実質的に不可能だ。どのみち今後も、試合に関わるすべての個々人に誠実さを求めていくしか方法はない。


「基本的に事実。やってしまったことをとても後悔しているし、ドイツサッカー協会、審判員の仲間、すべてのサッカーファンに申し訳なく思う」

 今回の事件の首謀者と目される審判員の告白である。もはや、貧困から八百長に手を染めるという単純な構図ではありえない。すべての審判員に不正の可能性があるとみなされる厳しい世相になりそうだ。検察の捜査に対してファンはじっと静観するほかないが、なにぶん気分は重くなるばかりである。どの国のどのリーグにも、この手の不正が行なわれている可能性を否定しきれないのだから・・・。
 贔屓のチームに勝利してもらいたいというのが普通のファン心理だが、この誤審に関しての問題が絡むと少々複雑になってくる。たとえ我がチームが勝っても、それが明らかな誤審による勝利であればその勝利を返還する運動をし始める、ということは考えられない。つまり、判定に関する疑惑は常に敗者の側からしか持ち上がらないのだ。ここに賭博組織の入り込む隙がある。根は、思うよりもずっと深そうだ。

by meishow | 2005-02-03 11:42 | フットボール


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