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名将気取り

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2005年 01月 24日

ジーコ思う、ゆえにジーコあり

 トルシエが去り、ジーコ新風が舞ってからすでに久しく、もはやマンネリ感さえ漂ってきてますから、一人か二人は新顔を入れて欲しい気持ちも確かにある。以前、招集希望リストに入っていた玉田や大久保などは、徐々にA代表に定着しつつあり、そう考えてみれば、わりとジーコになってからは個人的な成績さえ良ければ招集されるチャンスが増えているということなのか。
 とは言え。指揮官のこだわりだったはずの4バックも、いつしか3バックで落ち着いて、今やアジアを代表する古典的3バックのチームです。流行が下火になった3-4-1-2の残影と言えば聞こえはいいが、実際上は両サイドが最終ラインに吸収された5-3-2。モダンなチームだとはとても言い難い。

 守備に追われて攻め上がる暇のない両ウイングバックに、自陣ゴール前でしかボール奪取できない守備ライン。間延びしきった中盤。プレスで消耗するFW。そして得点源はセットプレーとカウンターのみ。う~ん。どこかで見た覚えがある・・・。
 そう。岡田監督時代の日本代表にそっくりです。井原が宮本に、名波が小野に、中田が中村に変わっただけではないのか。まさに得点パターンも同じだし、加えて間延びした中盤と下がりすぎるDF。何もかもが同じに見えてしまう。
 『接戦には持ち込むが、勝ちきれない日本』を変えるためのジーコだったはずだが。
 
 相手プレスをかわしきった上でキープし、敵陣の穴を見つけて攻め入る。そんなポゼッションを重視した大人なサッカーは、対戦する相手が明らかな格下であっても容易ではない。欧州各国との対戦でも、昨今の日本代表はボールキープ率を互角の数字に持ち込めることも多くなったが、『持たされている』受動的なキープ時間の割り合いは思うよりも多い。
 加えて、日本はアジアの国を相手取っても、押し込まれる展開すら多いのである。アジアの上位(ex.韓国・イラン)レベルを相手に戦って、圧倒的な支配率と得点力を見せつけて勝てるようになれば話は別だが、多少勝負強くなったというだけで現段階では余裕のあるポゼッション・サッカーなど望むべくもない。にもかかわらずの、黄金の中盤路線である。(世界のトップレベルを黄金とするなら、さしずめ『青銅の中盤』だが・・・) 恐らく怪我やコンディション不良さえなければ、現在でもジーコの描くベストメンバーは例の四人だろう。

 いかに個人的にキープ力があっても、ただ一回のミスパスで攻守が逆転するのがフットボール。突破力に優れるとは言えない四人が揃ってキープしても、前への迫力はまったく感じられないのが現状だ。

 ただ、ジーコにも矜持がある様子。
 彼の一番の特色は選手選考に如実に現れる。特に中盤に関しては、テクニカルな選手であることが選考基準のようです。トルシエ時代に重用された戸田タイプの選手はまったく招集されない傾向が見てとれます。テクニック至上主義とでも言うべき、彼一流の美学であります。それはそれで、貫くには相当の覚悟がいる美学だが、その点に関してはジーコは就任以来一貫していいる。藤田は外さないし、五輪代表から呼ぶ中盤も松井大輔。中には福西などもいるが、どちらにしろ猟犬タイプの選手は皆無である。
 ただ、テクニカル選手がいくら揃えども、スペクタクルな演出をしたことがない。に出るだけでは、リスクを負ってまでそれらの選手で構成している意味がない。足先の巧さだけ揃えれば勝てた時代とは違うということを、神様がお悟りになるのはW杯会場でか、それともその前段階においてか。

 そもそも、ジーコが日本代表監督の座に就いたのは、彼の心意気だけが動機に思えてならない。彼には名誉欲はないし、経済的な欲から就任したわけでもなかろう。どちらかと言えば、失敗すれば自らの栄光に傷を付けるだけという火中の栗に過ぎないポストなのである。監督職に興味を抱いてこなかった神様は、この現在の職を退いたのちはどこの監督にも就くつもりはないと言われている。

 欲のない人間が最も怖い、というのは真実かも知れない。トルシエには強烈な欲があった。岡田監督にしても世界を体験したい、というような彼なりの欲はあったろう。しかしそれがジーコにはない。かけらもない。そのポストにしがみつく欲すらない。言い換えれば、粘りがない。彼は人一倍負けず嫌いであるとか言われるが、それもあくまで美学に基づいた爽快なものであって、粘着性の強いネバネバした感情ではない。

 ジーコはやはりサッカー界の神様なのかなぁ。というか仙人か。
 クライフのような監督としての実績も、ファン・ハールやトルシエのような分厚い戦術書も、ヒディングやモウリーニョのような起用マジックも、ジーコにはない。ただ、彼は最強にして唯一の必殺技をお持ちである。
 『運』である。なぜか憑いている。世にはそういう人が稀にいる。そこは技術や経験ではどうしようもない領域。それも間違いなくひとつの才能である。かのナポレオンも、部隊の司令官を決める際には、各個人の持つ運を最も重視したと言われる。仮にナポレオンが日本サッカー協会の会長であったなら、彼はジーコを真っ先に指名するのか否か・・・。どちらにしろ、ジーコは抗うことなく泰然と事態を見つめ続ける。合宿するもよし。ブラジルで休暇に徹するもよし。すべては運なのだから。
 
 『ジーコ思う、ゆえにジーコあり』

 サポーターとしては、彼の在任中に楽しめることを楽しんでおいた方が良いかも知れない。それは何か。『ベンチにおわします我が代表監督を眺めること』です。プラティニと並んでも、エリクソンやルシェンブルゴを前にしても、まったく見劣り感を醸し出さない日本代表監督。そのレベルの人物が我らが代表のポストに就くことは、今後そうあることではない。

 肝心のフットボールは?
 フリーキックと同じです。準備だけは目一杯しておいて、あとは『神のみぞ知る』ということで・・・。

by meishow | 2005-01-24 17:49 | フットボール


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