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2005年 02月 26日

日本B代表の存在意義

 以前から噂のあった日本代表のBチームの編成が決定された。実質的な活動は、W杯最終予選の日程を終えた今年8月以降とのことだ(参照)。どんなカテゴリーであれ、限られた人数の中で新たな戦力を発見していくという作業は容易ではない。日本代表のトップチームにあたるA代表も、その人数制限のために未知の戦力は多く登用できないという問題は常に抱えている。これを解消する手段のひとつとして考えられたのが今回のB代表編成だが、果たしてその効果はどれほど期待できるものだろうか。


「Jに出ている中堅の選手に代表レベルの経験を積ませたい」
「25、26歳ぐらいまでで国際経験をあまり踏んでいない選手にチャンスを与えられれば」

 こう語るのは日本協会の田嶋幸三技術委員長だが、基本的には代表に縁の薄かったベテラン選手が主な対象ではなく、若手から中堅までの選手の国際舞台慣れを目論んだ措置であるようだ。つまりは大黒(G大阪)の再来を期待していると見て良い。代表監督はセレクターとしての要素が強いポストであるため、新芽を育てるという時間的余裕はなく、限定された人数の中ではそういった未知の選手を選びたくても選べないという事情もある。
 リーグ戦の中で成長を目の当たりにしても、実際に代表に招集して使うとなると今まで使ってきた選手の誰かを外すということに繋がるのだから、それほどのリスクを犯してまで新登用できる人数が多くはないというのが現状だ。その点では、今回のB代表の誕生というのは大いに活用できそうな要素はある。

 だがこのB代表、その存在意義を問われる根幹の部分はいまだ不透明なままである。まず指揮官が誰であるかも未定で、つまりジーコ監督でない可能性も多分にあり、候補選手を選ぶセレクターが一体誰になるのかすらも未定なのである。
 B代表である限り、それはトップチームであるA代表の控えチーム的な要素が強くなるべきなのは当然だ。つまり、五輪代表やユース代表などとは存在の意義自体が異なる。各年代別の代表チームは、そのカテゴリーでの公式大会の好成績を目指すものであって、それがA代表入りへのアピールにはなるとしても直結する道とは言えない。たとえば、五輪代表とA代表の監督が別の人物であった場合、五輪代表での中心的選手がA代表に必ず招集されるとは限らないのである。セレクターである監督の趣向が反映されるためで、その点では個人的な好みに期待するしかないといったレベルである。

 しかし、B代表となれば話は別だ。本来はA代表と直結した組織であるべきで、仮にA代表に怪我人などで欠員が出た場合、追加招集されるのは確実にB代表のメンバーのいずれかであるべきである。仮に、そういった状況下でB代表以外の選手が追加招集されるようなら、単純に言って、このB代表の意義は恐ろしく薄いものになるだろう。

 有用なB代表というものがどういった形であるべきなのかは判然としないが、A代表への即戦力製造所として考えるならば、ある程度の形は見えてくる。まず、両代表のフォーメーション・システム・指向する戦術はまったく同様のものでなければならないだろう。チームとしての土台が同じものでなければ、両チーム間を行き来して即戦力となりえるはずがない。
 B代表で活躍した選手が、A代表に呼ばれた場合にもう一度A代表のシステム内で機能するかを試す作業が必要とあっては、B代表そのものの実質的な存在意義はないと言える。そう考えれば、トルシエ時代の五輪代表はB代表としての存在に近いものであったと言えるかも知れない。同じシステムで構成されていたため、五輪代表からA代表に上がった選手も戸惑いなくチームに溶け込めたし、戦力たりえた。

 もうひとつの問題として、日程の調整の難しさがある。リーグ戦以外にも試合数の増加している今日、A代表でもないチームへの招集で主力選手を取られるクラブはたまったものではない。「月、火曜が練習で水曜が試合というパターンもある」(田嶋氏)とは言うが、クラブ側からの理解を得られるかどうかは難しいところだ。

 さらに付け加えると、B代表の対戦相手についても疑問点は多い。まず、B代表相手に好意的に試合を行なってくれるチームがどれほどあるのか。国際的な公式の試合にはA代表がこれにあたるわけで、B代表の実質的な試合相手としては、ランクの落ちるアジアの弱小国か、有名選手の招集されなかった強豪国との対戦などが考えられる。ゲームの水準も、対戦国のモチベーションの高さも期待はできず、むしろ怪我の心配は大きくなる。
 つまり、B代表の試合で選手の成長を見込むことはかなり困難であるということだ。試合をする意義としては、A代表の次期戦力として期待できる有望選手を練習試合の場で試し、その力を測るというところに持っていくしかない。どちらかと言うと、A代表合宿での紅白戦に近い意味合いのものになるだろう。それを海外の代表チーム(もしくはクラブチームか)と対戦することで推し量るというのが意義として浮かび上がってくる。

 若い選手の成長のきっかけはどこにでも転がっているのかも知れないが、やはり真剣勝負でない限りはその尺度も大きなものではなくなるだろう。B代表での試合経験で、本当の意味での国際経験値は増やせないと考えた方が妥当だ。そういった意味での成長はほとんど見込めない。選手は今現在の実力を、A代表と同じフットボールを指向するチームで披露する機会が与えられるだけ、と思った方が良いかも知れない。要するに、A代表のオーディションなのである。


 新たな代表を設けることにクラブ側の反発も少なからずある。Jとの厳しい日程だけでなく、B代表が個人のレベルアップにつながるのか首をかしげる指揮官もいる。
 横浜の岡田監督は「選手は(クラブかB代表か)どっちに行った方がプラスになるのか考えなくてはならない」と慎重な姿勢を見せた。

 実際上、B代表への招集がA代表への最良の近道でなければ、選手がこれを選ぶ意味がなくなってしまいかねない。A代表ならいざ知らず、B代表へ招集されて、その中で怪我を負ってクラブチームに帰った選手がクラブ内でのポジションを失うとなれば、選手個人にとって良いことは何もない。それでもB代表が、A代表への近道であると断言できるのならば、選手はリスクを負ってでも参加しようというモチベーションの支えにはなりえるかも知れない。

 B代表の候補には、前五輪代表の石川・今野・茂庭や、これまで代表歴のない二川や村井らの名も挙がっている。他にも田中達也・トゥーリオ・羽生・徳永・播戸などがこれに続くと見られる。
 さらに6月に開催されるU―21トゥーロン国際大会には、大学生も加味した21歳以下のチームを編成して臨むようだし、同時期にU―20世界ユース選手権もある。そんな中で、今回のB代表がどのような存在を保持できるのかは現時点でははなはだ疑問だ。確かに国際経験の有無も重要なのは違いないが、レベル的にもモチベーション的にも真剣勝負をすることの難しい相手と戦うことで、どれほどの効果が得られるのかという疑問は拭えない。やはりJクラブの各監督からもその声は多くあったようで、中でもジェフ千葉のオシム監督の言には説得力がある(参照)。


「アイデアはいいが、B代表と本気で対戦してくれるチームはあるのか。それでは何試合やっても大黒の(北朝鮮戦の)10分間の経験にはかなわないだろう」

 あまりにも核心を突いた言葉である。B代表の存在意義を、A代表の公式の紅白戦というような線引きでもしない限り、こういった疑問は常につきまとうことになる。無論、B代表という新たな扉の構築は、まだ見ぬ可能性も秘めていることは確かだ。ただし、それはA代表とのリンクの仕方が、どういった形になるのかですべてが決まってしまうのである。次期W杯まであと1年、そしてさらにその先を見据えた一手として、このB代表という新たなカテゴリーが有効に活用されることを強く望みたい。


「ぜひ代表レベルで国際経験をしてもらいたい。06年以降をにらみながら、もしかしたら06年に間に合う選手が出るかもしれない」

 田嶋委員長のこのコメントは実に希望的要素に溢れているが、これが表面的な辻褄合わせとならないように願いたいものである。まずはB代表の監督とセレクターの選定。そしてA・B両代表チームの方向性の統一などの発表を待たなければ、期待も失望もできない。有望な候補選手は少なからずいるだけに、彼らの可能性とモチベーションを大きく上げるような、実効的な選択と判断を望みたい。  
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by meishow | 2005-02-26 17:56 | フットボール


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