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名将気取り

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2005年 02月 21日

小は大を兼ねる

 首都陥落。地元サンチャゴ・ベルナベウに迎えての『0-2』、完敗と言って良い(参照)。苦杯を舐めさせられた相手は、またしてもアスレティック・ビルバオ。第24節、鮮やかな2得点で年明け7連勝中のレアル・マドリッドを粉砕した。

 ビルバオは年が明けて以降さほど好調ではなかった。特に毎試合の序盤で守備陣が安定せず、ここ4試合で10失点。爆発的な攻撃力が生かされなければ、今の位置は確保できなかったろう。しかし、このビルバオ。スペクタクルという意味ではバルサに何歩も譲るが、こと試合中のドキドキ感だけでは上を行く。試合が終わるまで安心させてもらえないのだから、味方も敵も落ち着けない。ビルバオの魅力に関しては先日書いた通りだが(参照)、今季の強さは本物だ。守備陣を整え、戦力流失を抑えられれば、来シーズンも期待できそうである。

 一方のレアル・マドリッドは、バルサの背中に照準を合わせたリーガ2位につけている。今回は後に控えたCLも睨んで、ラウル・ジダン・ロナウドの主力を温存してこの一戦に臨んだ。普段は三列目に配されているグティが、彼本来のポジションであるトップ下に置かれ、グラベセン・ベッカムのコンビを中盤の底に布いた。右にフィーゴ、左にソラーリ、充分に豪華な布陣である。
 しかし、結果的には皮肉にもグティのところでリズムが崩れた。前半こそ効果的なパスで攻撃を演出したグティだったが、時折り訪れる決定気を何度となく外し、チームの足並が揃わなくなる分岐点を創出してしまった。チャンスはあるのだが決まらない。後半、デル・オルノにヘッドで決められると、攻撃の歯車は一層空転することになる。

 攻め続けるレアル・マドリー、効果的な鋭いカウンターで応酬するビルバオ。完全にリズムはビルバオのものだ。イラオラの2点目が決まると、万事休す。いくら遅れてきた豪華3大スターを投入しても間に合わなかった。

 ルシェンブルゴとしては仕方がなかったかも知れない。その意味で失策と揶揄するのは酷だろう。CLの決勝トーナメントを控え、しかもその相手がユベントスである。元来の手堅い守備に加え、カペッロの美学が重なった今季のユベントスは中身はどうあれ、実質的に強い。我がチームの強みと弱みを知り尽くしたルシェンブルゴが、その対戦に慎重になるのは無理もないだろう。とにかく、レギュラー陣のコンディションがMAXでないと勝てる相手ではない。
 
 この試合、デル・オルノの後ろのスペースを突く意図は前半初めから見受けられたが、そもそもオーウェンの1トップという布陣にルシェンブルゴのプランが透かし見て取れる。攻撃陣の好調なビルバオが嵩に懸かって攻め立ててきたところを自陣ゴール前でボールを奪い、それをベッカムまたはソラーリ・フィーゴが前線のオーウェンへロングフィードして電光石火のカウンター。その機会は試合中に何度となく訪れるだろう。それを一回でも決めれば、勝負をものに出来る自信があったのだろう。勝ちさえしていれば、名采配と評価する声もあったかも知れないが、しかし今のビルバオ相手にそういったセオリーは通じなかった。

 そんなビッグクラブの苦悩もお構いなしに、この日もデル・オルノは前線まで駆け上がり、ジェステは中盤を荒らしまくった。イラオラもエチェベリアも、スペースを切り裂いて走った。予算も人気も戦力も、何もかもが隔たっている。それでも、この試合はビルバオの完勝だった。マグレでは決してない。今季はレアル・マドリーと2戦して2勝。サン・マメスでの前回対戦でもあっさりと勝っている。それは、ビルバオの今シーズン最初の勝利だった。
 二度やって二度負けた相手に、「マグレだ」というのは負け犬の遠吠えでしかないだろう。前半に見舞われた超ロングシュートでの1失点を線審の誤審で免れたはずの守護神、イケル・カシージャスは試合後にこう呟いた。
「今季最悪の試合だった。すべてが裏目に出たし、チームメートも次の試合に頭がいっていた部分があると思う」
 好セーブを連発してチームを活気づかせたビルバオのGKアランスビアの、試合後に見せた晴れ晴れとした笑顔とはかけ離れた陰鬱さが漂う。ビッグクラブゆえの重圧も、ビルバオには微塵もない。プレーする時間を誰もが充実した思いで過ごしているように見えたバスクのイレブン。決して華麗ではないが、泥だらけの格好良さが光った。
 
 白い巨頭軍団はこの黒星で首位バルサとの差も開き、サルガドの軽い怪我も付録でついてきた。これでCLでも勝てなかったら、誰が責任を取るのだろうか。坊主頭のサッキはすでに頭を丸めらることが出来ない。バリカンの歯が当たるのは他の誰か。それに関してはあまり興味深くもないが、グラベセンの他にも中盤の底の人員は数人必要な気がするのは確かだ。

 一方のビルバオは、今季の成績如何で欧州戦線への道が開ける。こちらはこちらで、デル・オルノ、ジェステら新進気鋭の戦力流失をいかに抑えることができるかが勝負。しかしながら、このチームにはレアル・マドリーに足りないものがすべて備わっている。小は大を兼ねるか。勝負を別にしても、内容でも完勝だった。彼らの誇り高さにも納得の結果である。

by meishow | 2005-02-21 17:21 | フットボール


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