名将気取り

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2005年 02月 20日

ドルトムントの凋落

 先日、ブンデス・リーガの名門ボルシア・ドルトムントの倒産の危機というニュースが流れた(参照)。しかし最悪の事態は免れたようだ。ゲルト・ニーバウム会長が財政危機の責任をとって辞任し、ホームスタジアムであるウェストファーレンのレンタル使用料の支払い延期と06-07シーズンまでの負債返済猶予(モラトリアム)などの措置が講じられることになった。累積で軽く1億4千万ユーロを越えるといわれる赤字財政を、いかに立て直すことができるかがクラブ存続の第一の課題だ。

 ドルトムントは決して零細なフットボール・クラブではない。株式市場に一部上場をしているブンデス唯一のクラブである。90年代半ばに名将ヒッツフェルトに率いられ、国内リーグ2連覇を達成。翌年のチャンピオンズ・リーグをも制して、トヨタカップまで獲得した。長期的視野で見た限りでは成績の波が安定しないものの、観客動員の好調なブンデスにおいて集客数トップを叩き出しているのがこのドルトムントである。つまり強豪といっても過言ではない。

 ではなぜ、こういった財政難に陥ることになってしまったのか。すべてはチャンピオンズ・リーグ出場ありきのクラブ戦略が原因だろう。世界中が注目するCLは、他の大会たとえばUEFA杯などに比して、破格の放映権料が企業から支払われる。その放映権での収入を見越し、さらに大会で勝ち進んだことによる多額の賞金をアテにして年間の予算を算出するという、いわば『獲らぬ狸の皮算用』的発想でクラブの指針を構築してしまった。その杜撰さたるや、目を覆うばかりのものである。

 昨今、斜陽のクラブ増加を導く主な原因とされているのが人件費の大幅な増加であり、特に選手獲得に要する多額の移籍金と高値でありすぎる個々人の年棒である。ドルトムントは2000年以降、毎年のように高額の移籍金を伴う大型移籍を敢行し、それを貫徹してきた。アモローゾ、ヤン・コラー、ロシツキと枚挙に暇がないほどである(ちなみにアモローゾは約35億円、ロシツキは約20億円)。それでもUEFA杯に準優勝を果たすなど何とか結果を残しつつ食い繋いではきたが、CLの出場権を逃し始めたことですべての歯車は狂っていった。

 利益を生み出す宝箱であったはずの株価もこれで徐々に下落し、むしろ負債を重くする結果を招く。しかもここ2シーズンは続けてCL出場権を逃し続けた。無論、来シーズンもCL出場権を獲得できなかった場合は(その可能性は高いが)、もはや手の打ちようがなくなる。
 国内リーグの放映権ですらも、もはやドルトムントは期待することはできない。優勝争いをする力のないクラブに、多額の金を支払うことはありえないからだ。たとえ毎試合1万7千人強の集客数を誇ろうとも、そのチケット料だけではどうにもならないほどに負債は膨れ上がってしまっている。

 今シーズン中の分解は避けられたとはいえ、来季に向けて財政の再建計画はゴリ押しにでも進むことになる。まずもって手を加えるべきは人件費であることに疑いはない。その経費削減目標は現在の50%減という噂もある。これはもはやブンデス内で優勝戦線に加わる力を維持できるレベルではない。2部に落ちても不思議のない予算設定である。
 そうなれば、現在の主力級がこの夏ごっそりと離脱する可能性は否定できない。ロシツキ、コラー、デデ、エベルトン、メツェルダー、ケールと、働き盛りの有望な選手たちが夏の移籍市場を賑わすことになるだろう。それでもドルトムント側は破格の移籍金で吹っかけることはできない。交渉相手は、尻に火のついているこちらの足元を見てソロバンを弾くのである。二束三文でも手放すほかはなくなる。雪だるま式に転がっていく様が目に浮かぶようだ。

 そう言えば、前にも似たクラブの衰亡があった。数シーズン前、イングランドで隆盛を博していたリーズ・ユナイテッドである。有望な若手選手を買い漁りCLに打って出る戦略を立てたまでは良かったが、そのあと転げ落ちた坂道の急角度と言ったらなかった。今は往時の評価が嘘のように聞こえる。その凋落の主な原因も高額の人件費によるものだった。というよりも、好成績を加味しすぎた予算設定のミスである。

 投資とは元来そういう種のものなのだろうが、弾くソロバンの軽さがどうにも気になる。今季CL出場権を得たからと言って、来季も確実に奪取できるとは限らないのである。それはいかな素人でも考察できる範囲内の問題だろう。しかしこの手の失策は有名無名を問わず、昨今のクラブ経営者に多く見られる傾向だ。手堅い経営で、堅実な一手だけで詰めていくクラブは各リーグにそう多くはない。

 この先、当面は火の車のドルトムントも集客数の多さにアグラをかくつもりでいるだろうが、おそらくその期間も長いものではなくなる。経費削減、戦力流失、そして下落していく成績。ここまできては、監督がファンマルバイクであろうとなかろうと関係がない水準の話だ。

 ともすれば、バイエルン・ミュンヘンを凌ぐ欧州きっての超名門の座に君臨する夢を見ていたのか、ドルトムント首脳陣。甘すぎる目測は手痛い怪我を伴った。さて、これから観客の目を繋ぎとめつつ、反撃の狼煙を上げることが果たして可能だろうか。これから先、クラブ財政難に関するこういったケースは増えることがあっても減ることはないと見る。ある意味では、今後のドルトムントの進退は興味深いミッションではある。
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by meishow | 2005-02-20 00:42 | フットボール


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