2005年 03月 22日

新・天皇杯という考え方

 リーグ戦とカップ戦、これらふたつが平行して行なわれるのが現代フットボールのスタンダードな形だが、日本の場合はリーグ戦がJリーグ、カップ戦にあたるのが天皇杯ということになる。だが忘れてはならないのがヤマザキナビスコ・カップ(ナビスコ杯)の存在だ。シーズンオフの直前に決勝戦が行なわれる天皇杯の存在意義も危ういが、ナビスコ杯もそれに劣らない危うさを秘めている。
 1992年にスタートしたナビスコ杯だが、翌年に始まったJリーグの誕生でその存在意義自体が疑問視されていた。そもそもカップ戦としてのキャラクター上、天皇杯との違いが出しづらく、しかもリーグとの兼ね合いも図りづらいその存在感は、監督や選手にとってもイメージとして把握することが困難な大会だと言える。日本のフットボールファンとしてもイメージしづらいという状況は同様だろう。


決勝トーナメント
予選リーグ各グループ上位1チーム、2位のうち成績上位の2チームおよび、横浜F・マリノス、ジュビロ磐田によりホーム&アウェイ方式のトーナメント戦を行う。(決勝は1試合のみ)

 今年のナビスコ杯の決勝トーナメント大会方式である(参照)。昨年までの形と比べて、一回きりのノックアウト方式からホーム&アウェイの2回対戦方式へ変更されているところが注目点だ。従来の方式では、勢いのあるだけのチームが勝ち残るだけの大会になる公算が非常に高かった。今でも天皇杯はこの方式を取っているが、シーズン途中で戦うカップ戦では勢いの部分の影響力がことのほか大きい。ホーム&アウェイに切り替わったことは歓迎したい。引き分けが導入されたことで戦い方にも変化が期待できるし、試合数が増えることで純粋に強いチームが勝ち残る可能性が高まったことは確かだ。

 それに比べて、天皇杯には一層未来がない。天皇杯はプロとアマチュアが公式に対戦できる日本唯一の大会であるとはいえ、もはや昔日ほどの存在意義は持ちえていない。各Jクラブの選手の契約更改時期を過ぎてから、大会としてのクライマックスを迎えるという設定自体が茶番と化している。高校の強豪校が参戦しようとも、高校側は学校レベルの公式大会との日程のやりくりで苦労すると聞く。
 第一、負けて行ったチームからオフシーズンへ突入するという構図も、少し考えればおかしな話だ。しかもこの大会の勝者は、日本の代表的チームとしてアジアの大会へ出る参加資格を得るのである。

 J1所属のチームなら、トーナメントで最短5試合勝てば優勝してしまうこの大会の勝者が、果たして日本のトップであると言い切れるだろうか。わずか5試合の勝利。その年のリーグ戦を散々な成績で終えたチームであっても優勝することがあるかも知れない難易度の低さだ。総合的な意味での強さをまったく証明することなく優勝してしまう危険性すらあるわけである。開催時期も、伝統として冬のこの時期にしてきたという理由のほかに明確な理由を得ない。極論として、この大会がなくなったからと言って困るクラブはそう多くないだろう。

 アジアの公式大会であるアジアチャンピオンズリーグ(ACL)は、各国クラブチームによるアジア王者決定戦である。以前に開かれていたアジアクラブ選手権、アジア・カップウイナーズカップ、アジアスーパーカップの3大会を統合して2002年から開始された。このアジアへの挑戦権を得るのは、各国リーグのリーグ戦の優勝チームとカップ戦の優勝チームであり、日本の場合はJリーグの勝者と天皇杯優勝チームがこれに相当する。ナビスコ杯ではなく、天皇杯での勝利でアジアへの扉は開かれるのである。この取り決めがなおのことナビスコ杯の存在意義を薄くしていると言える。大会として、賞金以外にこれといったメリットがなく、リーグ戦の最中に同時進行し、しかも日本のA代表の試合日程とかぶっている。盛り上がらないのも当然だろう。もはや慢性的な欠陥を抱えていると言わざるをえない。

 繰り返すが、ナビスコ杯の試合のある日は概ね日本代表の試合が重なっている。ということは、各チーム代表級の選手を欠いた状態で試合に臨むわけで、おのずとリーグ戦の試合よりもメンツの質は下がる。それでも大会の優勝チームに何らかのメリットがあれば、弱小のチームにとってはチャンスと言えなくもないのだが、ホーム&アウェイ方式の導入によって、2戦通しての総合力で凌駕しない限り勝つことが難しくなってしまった。たとえ、優勝してもアジアへの道が開かれることもない。これでは各チームがモチベーションを得ることの方が難しいだろう。

 今シーズンのナビスコ杯は、ACLに参加する横浜・磐田の両チームをシードにして決勝トーナメントからの出場としており、残りのJ1所属16チームが4グループに分かれてホーム&アウェイの総当りで戦い、各グループの1位4チームとグループ2位の中の成績上位2チームが決勝トーナメントへ駒を進める。
 トーナメントも準々決勝・準決勝まではホーム&アウェイで行なわれ、準々決勝の対戦カードは抽選によって決められる。決勝だけは一回きりの一発勝負となるのだが、全体としては面白くない大会とも言えないのである。むしろ、天皇杯よりも現代的な価値観を感じさせてくれる。

 いっそのこと冬の天皇杯を思い切って廃止して、ヤマザキナビスコ主宰のもとでナビスコ版天皇杯という新たな大会を再編しても良いのではないかと思う。大会の方式は現行のナビスコ杯をそのまま採用して、つまりは『天皇杯』という名称だけを冠に戴くのである。将来的にはJ2のチームまで参加資格を広げても良い。さらにはJ2以下のクラブで代表を選抜する大会を作って、アマチュアチームでも参加できるような枠を小数作っても面白いだろう。

 仮にこれが実現すれば、アジアへの道もストレートに開かれるわけだし、A代表クラスのいない強豪を倒そうとする弱小チームのモチベーションも喚起できる。リーグ戦の勝者とカップ戦の勝者という枠組みも、きっちりと棲み分けができて明瞭だ。何より、試合が単発で長期間に渡るカップ戦の難しさが、従来の天皇杯にはなかった現代的なフットボールの面白さを呼び起こすことになるだろう。

 天皇杯の伝統とナビスコ杯の大会方式の妙が巧くミックスされれば、今までの日本にはなかった高品質なカップ戦が誕生するかも知れない。その資質を備えた2つの大会を、我々はいかに無駄に浪費しているだろうか。疑問視される天皇杯、盛り上がりの欠けるナビスコ杯。これらを統合するに際して、スポンサー的な問題以外に大きな障害でもあるのだろうか。

 欧州では各国リーグのリーグ戦の他に、欧州単位での大きな大会が注目を集めている。たとえマイナーな国のクラブチームであっても、その国のリーグで好成績を収めれば欧州の舞台へ打って出ることができる。各国リーグの上位チームは欧州チャンピオンズリーグへ、それよりも少し成績の劣る数チームはUEFAカップへと進む。だが日本の場合は、アジア規格での公式の長期カップ戦を実現することは当分は叶いそうにない。ならば、自国で開催するまでだ。

 とにかく盛り上がらなくては話しにならない。Jリーグの中で、明確でないイメージのままカップ戦を複数開催していても仕方がない。リーグ戦とカップ戦。その位置付けを認識させるためにも、通常のリーグ戦と共に平行して開催される新・天皇杯という青写真には魅力を感じる。昨年のリーグ戦での不振が印象に残っている磐田が今季ACLへ参加しているという事実に多少の違和感を覚えるならば、やはり現行の方式には問題があるということだ。伝統は伝統として残せば良いのであって、変更を恐れてはならない。何よりも、無味乾燥とした天皇杯を戴き続けることは、日本のリーグにとってもさして有益なことではない。
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by meishow | 2005-03-22 21:20 | フットボール


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